大麻の神々
大麻比古神(おおあさひこがみ)と麻植神(おえのかみ)。
ともに太古に大麻草を植えて紡績産業を興した神様で、古代阿波国の忌部氏の先祖です。
大麻比古神は大麻比古神社、麻植神は忌部神社。どちらも徳島の神社で祀られています。
忌部氏は日本の神話の世界で祭事に関わる重要な役割を果たし、今も天皇家の祭事に深く関わりを残しています。
忌部とは穢れを忌む集団という意味です。大麻草が穢れを祓うと考えられていることと繋がっています。
天岩戸の神事を司った布刀玉命(あめふとだま)の子孫である天富命(あめのとみのみこと)が勅命でこの地に降り立ち、麻を植えて産業を振興させ、やがて大麻比古神となったそうです。
布刀玉命は岩戸に籠ってしまったアマテラス大神を誘い出すために占いを行い、様々な職種の神々を統括し、道具を用意させて祭りを取り仕切りました。
現在神社で見かける玉串や注連縄のルーツとなるものがこの時に作られたと言われています。
玉串は榊(さかき)に紙垂(しで)を麻紐で結んだものとして現代に伝わっています。
布刀玉命は忌部氏の祖神で、麻植神は忌部神社で祀られている天日鷲命(あめのひわしのみこと)でこの神様が阿波忌部氏の先祖神とされています。
現在も忌部氏の縁りの神社は徳島に多く存在し、神事として大麻草を栽培し織物を天皇家に献上しています。
徳島新聞が新天皇即位後の大嘗祭のために製作される麻の織物「麁服(あらたえ)」について報じています。
https://www.topics.or.jp/articles/-/148764
山崎忌部神社では大正、昭和、平成の天皇即位の際にも麁服を製作しています。
忌部氏の直系である美馬市木屋平の三木家で麻の栽培と製糸を行い、山崎忌部神社で巫女による機織りされ宮内庁に貢進します。
この地域は麻植郡(おえぐん)とよばれていたのですが、市町村合併によりその名は消滅しました。
大麻草の植えて産業を興した神々、大麻比古神(おおあさひこがみ)と麻植神(おえのかみ)。その子孫の忌部氏の代は脈々と続いています。
天皇家の祖先である天照大御神の岩戸開きを司った神様の子孫が現代の天皇に大麻の織物を献上する。
古事記や日本書紀に登場する大麻草の伝説が今も生きています。
高野泰年