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大嘗祭に調進される大麻織物 麁服の畑

大嘗祭とは新天皇が即位して初めての新嘗祭のこと。この重要な祭事に大麻の織物である麁服(あらたえ)が調進(天皇家から依頼を受けて納めること)される。

麁服の製作は古代から徳島の阿波忌部氏の三木家が、種撒きから刈入れ、製麻、織布まで全工程を統括する。
天皇家と阿波忌部氏は天の岩戸神事からの強い繋がりがあると言われている。
天の岩戸神事を司ったのは阿波忌部氏の祖先である天日鷲命(あめのひわしのみこと)で、大麻を植えて産業を起こしたとして麻植神(おえのかみ)として各地で祀られている。
忌部氏は阿波を起点に島根、和歌山、福井、兵庫、千葉、三河、福岡などを開拓していった。
麻・穀・粟・農業・織物・養蚕・製紙・鍛冶などの殖産興業と音楽、芸能、祭祀を伝えたとされている。

調進物には「由加物」(食物や器、道具など)と織物として麁服と繪服(にぎたえ:絹織物)、木綿(ゆう)がある。
中でも麁服は際立って特別な存在で繪服とともに大嘗宮の天皇のベッドである「第一の新座」に置かれる。
麁服は大王霊という天皇の霊が着る神衣。
麁服は朝廷から派遣された勅使の先導のもと、阿波忌部人の「御殿人(みあらかんど)」に厳重に守られながら阿波の旧麻植郡木屋平村から直接宮中まで届けられる。
そして宮廷祭祀の長である神祇官が直接預かり丁重に保管する。
他の調進物は異なり、阿波で全ての工程を終えて京都へ運ばれるところに天皇家と阿波忌部氏の特別な関係が表れている。


令和の大嘗祭で二度目の麁服調進をされたのは阿波忌部氏直系の三木信夫氏。
麁服調進は室町時代の南北朝の動乱で途絶えたが、三木家の強い働きかけにより大正天皇の儀式で577年ぶりに復活した。
前回の麁服調進に掛かった費用は数千万円といい、栽培畑を24時間警備する人件費も大きな負担となったという。

三木家住宅は徳島県最古の建造物(築400年)で国の重要文化財にもなっており、麁服作成に使用した一連の資料を展示している。
現在も三木信夫氏が管理されている。
三木氏は古代からの徳島発祥の伝統文化保全と歴史的価値の再評価のために全国で講演している。大嘗祭は日本の歴史そのものである、と。

三木家資料館の前にある大麻畑は麁服のためだけのもので現在は栽培されていない。
当地の市町村合併の前の名称は麻植郡(おえぐん)。
阿波忌部氏はこの地を日本で最も美しい精麻の採れる場所と見なしていた。

参考
日本の建国と阿波忌部 林博章 著、発行

日本経済新聞記事 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40029440V10C19A1962M00/

三木家資料館  徳島県美馬市木屋平字貢143  https://www.city.mima.lg.jp/kanko/map/list/11496.html

徳島新聞の連載 <あらたえ考~> では大麻草と忌部氏、天皇家の繋がり、地域住民の支えが綴られている。
https://www.topics.or.jp/articles/-/282856

画像は三木信夫氏から特別に拝借したもの。

 

高野泰年

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