厚労省と大麻取締法 訴えられて違法性が浮き彫りになる
原告 株式会社 Goodshit ほか4名による令和 5 年(行ウ)第444号
指定薬物を購入して販売することができる地位(権利)の確認訴訟、及び指定薬物指定省令取消訴訟の準備書面が公開されている。
https://drive.google.com/drive/folders/1mn7sWW3-s53k1igYNvJVDEo6hZqkI785
昨年12月記された準備書面(2)と(3)を読んで私が気になった個所を挙げてみる。大麻取締法の違憲性と厚労省のデタラメさが良く表れていると思う。
準備書面(2) 令和6年12月9日
第一 被告厚労省の準備書面への反論
一 摂取許容量を無視することは違憲
摂取を許容すべき量の範囲内の規制は違憲である。
憲法13条幸福追求権と22条でいう公共の福祉を超えて営業の自由を侵害している。
三 人間に対する実験は倫理に反するか
摂取許容量を明らかにするために人間に投与実験をするのは倫理上問題があると被告は主張するが、未知の物質ではないのだから使用者に使用料、頻度、悪影響などを調査することは難しいことではない。
六 指定薬物の販売の自由
被告は人の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物質は医薬品であり、医薬品の製造承認、販売禁止などの法制度の適用を受けると述べる(医薬品・医療機器法2条)。しかしそれならば脱法ドラッグに対応する際に、この条文を活用すれば済むので、指定薬物制度ましてや包括指定制を導入する必要があったのか。
七 釈明事項について
10日間経過すれば販売禁止という制度は重大な不利益である。被告は本指定薬物が指定される可能性は織り込み済みというが、施行前どころか実行成立するか不明な法制度に従えというもので、無茶である。
第二 原告の主張
二 大麻・指定薬物の娯楽使用の全面禁止は違憲
1 適正使用と逸脱使用
大麻の娯楽使用は、カナダ米独など主要な国で解禁され、前科も抹消する方向に来ている。その根拠は、適正に使用すれば、禁止すべき有害性がないということである。
むしろ、厳罰主義の下では、闇市場のもと、不純物の混じった商品が流通したり、過剰で安全でない使用がなされるので、国家が管理し、適正使用を許容するとともに、商品の安全性を確認し、過剰な使用を規制するというものである。日本の厳罰主義は、これらの諸外国の動向に反する。
被告は閾値を定めていないと主張するが、閾値を定めていないことが違憲である。閾値の範囲内では自己責任であり、幸福追求権の問題であるから、国家は介入してはならない。
ドイツでは成人25グラムの所持は許容限度である。
被告が服用用や症状などを明らかにせずに救急車で運ばれた例があるというだけで全面禁止の根拠とすることは許されない。
2 適正使用の範囲内での使用の自由と販売の自由
この法律は、個人の自由・営業の自由に対する過大な介入として、違憲であり、本件指定薬物の指定省令は違憲であるから、原告らは、本件指定された商品を販売することができる。私人は適正使用の範囲内では、その吸引を楽しむことが許される。
厚労省なり国会は、閾値を超える使用、或いは、未成年者への販売禁止、運転の際の使用禁止などのルールを定めて、それは逸脱使用として、禁止すべきであるが、そうした過剰ではない大麻の娯楽使用は禁止すべきではなく、その販売を許容すべきことになる。なお、大麻を吸引したという理由で、氏名を公表され、会社からは解雇され、大学を退学になるなど、無茶苦茶である。アメリカの動きのように前科抹消すべきである。
大麻に近いという理由で禁止される指定薬物(医薬品医療機器法2条15項)も同様である。
準備書面(3) 令和6年12月26日
三 求釈明
1 指定薬物制度においては「0ppm」を維持しながら、改正法で 1ppm、10ppm を設定したのは矛盾ではないか、その理由を具体的に説明されたい。
2 そもそも「少量なら安全」又は「ここまでなら不明」といった科学的閾値検討をいつ・どのように行ったのか、明確なデータや試験結果を開示されたい。前に主張した通り、マウスの実験では足りない。
3 海外 0.2〜0.3%規制やアルコール・カフェインに比して、なぜ「日本では0ppm/1ppm/10ppm」という超厳格規制が必要なのか、具体的な立法事実として、精神毒性の蓋然性や公衆衛生上の危険度が他の合法成分と比して特に高いという統計・臨床報告などを示されたい。
4 改正法の境界事例(1ppm,10ppm 前後)への再検査・救済策として、測定誤差によって合法・違法が分かれる事態を防ぐ制度や、業者・消費者保護の仕組みを具体的に示されたい。
以上
二つの書面から、厚労省の主張のおかしさが良くわかる箇所を抜粋したが、法廷以外の場面でも追及されるべきだと思う。マスコミはいつまで黙っているのだろうか。
・大麻所持・使用に閾値を定めないと主張しているのに、なぜ商品には濃度を設定できるのか?
・大麻の摂取許容量を人体で調べるのは倫理に反するとか年間5000人も大麻所持で逮捕されている国で何を言っているのか?
改正大麻取締法ではやっとTHCに焦点が当たった。ではTHCはどれだけなら摂取しても問題ないのか厚労省ははっきりさせねばならない。
日本はマスコミが追及しないから法廷で問い詰めるしかない状態だが、私は国民の追及の声を最大化して厚労省に回答を迫りたい。
拙著「大麻後進国ニッポン」は販売好調らしい。テレビ番組「ちょっと真面目な麻のTV」は関係省庁に取材を重ね、製作中である。
ゆっくりではあるが、日本の大麻行政の包囲網が出来上がってきている。
合法化する地域が増え続けている今、裁判所ももう「大麻の有害性は公知」などと言ってはいけない。
高野泰年