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ハリー・J・アンスリンガー

100年前に薬物戦争を始めた男。薬物を違法化して徹底的に取り締まり、アメリカだけではなく世界中に薬物戦争を押し付けた男。

この狂人は黒人への嫌悪も激しく、アメリカの国民的ジャズシンガー、ビリー・ホリデーを付け狙い、死に至らしめた。

アンスリンガーの主張に科学的根拠はなく、マリファナを吸うと気が狂って人を殺すなどとヒステリックに国民を扇動した。
また彼は薬物依存を治療する医師達を逮捕し、自分に意見をする部下を解雇した。

彼が大麻をも取り締まるようになったのは、石油業界や繊維業界、酒、たばこ、製薬業などの団体の強力な後押しがあったとする説がある。
アンスリンガーは妻の叔父であるメロン財閥のアンドリュー・W・メロン省長官を強力な後ろ盾として強力に麻薬戦争を展開した。

彼はアメリカ麻薬局初代局長を務めた後、国連麻薬委員会の米国代表にもなり、多くの国に薬物戦争を押し付けた。
ドラッグカルテルが市民を巻き込み凄惨な殺し合いをしているメキシコも、もとは薬物戦争に反対であった。しかし、アメリカに経済協力の引き上げをチラつかされ従うことになってしまった。
薬物を犯罪化するとギャングが肥大化して軍隊や警察まで買収されてしまう。メキシコは極端なケースだが、薬物を違法化すると国が歪むほどに腐敗することを表している。
アンスリンガーの暴走が元でどれほどの依存者が命を落とし、無用な殺し合いが起こったであろうか。
大量殺人を生んだ罪で裁かれるのが妥当であったと思う。

日本は未だにこの男の洗脳下にある。<ただノーと言おう(英語: Just Say No)>がアメリカのスローガンだが、日本は御存じ公益財団法人麻薬・覚せい剤乱用防止センターの「ダメ。ゼッタイ。」である。
https://www.dapc.or.jp/order/
この団体は未だに、大麻を使用すると廃人のようになって社会生活が営めなくなるなどとデマをまき散らしている。
理事の鈴木勉が大麻規制検討小委員会の委員を務めており、当然に使用罪創設を支持している。

ヨハン・ハリ著「麻薬と人間」は第一章でアンスリンガーがいかに汚い手を使って薬物戦争を広めてきたか、詳細に記されており、<ザ・ユナイテッド・ステイツ vs. ビリー・ホリデイ>として映画化されている。
https://gaga.ne.jp/billie/

因みにアンスリンガーは自らの上司が薬物依存症になった時はそれを庇い、自らが重病を患った時はしっかり薬物に縋っている。
また晩年、誤った薬物政策についてアメリカの討論番組で医師たちにコテンパンにやられている。

薬物を違法化することは損失しか生まない。依存者を増やし、ギャングを儲けさせる、おまけに逮捕や裁判など税金を無駄にする。
それが100年かけて検証された明確な事実だ。

参考
「麻薬と人間 100年の物語」 ヨハン・ハリ 著        作品社

https://en.wikipedia.org/wiki/Harry_J._Anslinger
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%9B%E3%83%AA%E3%83%87%E3%82%A4

 

高野泰年

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